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2020世界はこうなる(原題 『The World in 2020』)

2020世界はこうなる(原題 『The World in 2020』)

英エコノミストが発行した『The World in 2020』では、巻頭で編集者のダニエル・フランクリン氏が、本誌が注目した2020年の12のテーマについて紹介しています。

ダニエル・フランクリン氏は、『Megatech:2050年の技術』の著者であり、その著書は東京の英国大使館でにおいて弊社が共催したセミナー&レセプションで紹介されました。

2020年は画期的な出来事の連続となる。新たな10年の始まりは、将来に関していつもとは違う大きな考えを駆り立てるものである。偶然にも、10年の始まりとなるこの年は、60年ぶりに十二支の始まりである子年(ねずみ)となる。そして、本誌による予測の数々が説明する通り、2020年だけでもドラマに事欠かない。次に挙げる12のハイライトによって、これから起こる出来事について感触が得られるだろう。

1. 今が判断のとき。これは二つの出来事においてトランプ大統領に当てはまる。まず一つは、アメリカ連邦議会において民主党がトランプ氏を大統領の座から引きずり下ろそうとする動き(共和党が支配する上院は彼を助ける)、二つ目が、11月の熱気を帯びた選挙。それは醜悪なものとなり、我々が答えを求めたAI(人工知能)は、トランプ氏敗北の結果を導き出している。また英国では、ブレグジット(EU離脱)ありきの状況により、国は分断、ダメージを受けて弱体化するだろう。

2. 景気のマイナス指向との戦い。銀行、とりわけ欧州の銀行は、マイナス金利と戦うことになる。アメリカはリセッションを軽視するが、最悪の事態とはならずマーケットが回復したとしても驚くことはない。

3. 中国はポジティブ面を強調。中国は、国が掲げる目標「適度な繁栄」が2020年までに達成されたと主張するだろう。他諸国は、貿易やテクノロジーにおいて、中国とアメリカの各々の勢力範囲の間で、自国の位置づけを見出さなくてはならない。

4. スポーツにとって特別大きな年。東京オリンピックは世界から大観衆を集めるだろう。ユーロ2020サッカー欧州選手権は12か国で広範に行われる。クリケットでは、オーストラリアで開催されるT20ワールドカップ、そしてイングランドとウエールズで開催される新たな短い試合形式によるThe Hundredの大成功が期待されている。

5. 核拡散の不安。核拡散防止条約の5年ごとの見直しは、広島と長崎への原爆投下から75年となるこの年に課題の多い作業となる。核武装制御に関する合意の綻びによって、新たな軍拡競争への懸念は増すだろう。

6. 持続可能性が大流行。少なくともそうであることが話題に上る。(中国の)昆明では人々が生物学的多様性について議論する。グラスゴーでは、炭素排出に関して誓いを立てる。ビジネスリーダーたちは、株主が許す限りにおいて持続可能な資本主義を支えることを明言する。

7. 湾岸地域は世界を歓迎。ドバイは、自国で開催される国際博覧会の影響が長く続くことを願う。もっと厄介なことに、サウジアラビアがG20サミットのホスト国となる。

8. 複数のミッションが火星へ。アメリカ、欧州、中国、そしてアラブ首長国連邦の全てが宇宙探査機を送り込む。

9. テクノロジーの浮き沈み、ハイアンドロー。ハイは、空飛ぶタクシー、電気スーパーカー、オーダーメイド医療など。ローは、最大手テクノロジー企業による規制、税金、厳格な監視への対応強化など。インスタグラムは、このアメリカの選挙サイクルにおいて自分たちが論争の表舞台にいることを認識するだろう。

10. 大きな記念日が盛りだくさん、とりわけベートーヴェン生誕250周年。また、ラファエル没後500周年、メイフラワー号のアメリカ航行400周年、南海泡沫事件300周年、フローレンス・ナイチンゲール生誕200周年(世界保健機関は2020年を「看護師の年」に指定)、禁酒法施行100周年、国連設立75周年、そして、(ファンたちが静かに泣いている間に)ビートルズ解散50周年、を迎える。

11. エンターテインメントの激流がそこに。テレビのストリーミング戦争が激化し、ストリーミングはゲーマーにとっても新しい展望を開く。だが、ジェームズ・ボンドのファンは、007シリーズ第25作を観るために昔ながらの映画館に足を運ぶだろう。カイロの新大国立博物館によって、物理的存在感が今も重要であることが示される。

12.「Yold」または若い高齢者の10年。元気なベビーブーマーが65歳となり、世界では、30歳超人口が30歳未満人口を初めて上回る。2020年代は、アフリカの支配者層にとって間違いなく悪い10年となる。分離主義者の圧力に直面している国にとっては破滅的な10年であり、10年かけて地球規模で大気中二酸化炭素の引下げを目指す植物遺伝学者にとってはエキサイティングな10年となろう。

新しい10年は来年のその先を見据える口実を与える。特別セクションの「2020ビジョン」では、過去からの、また将来にむけた長期の予測を総括し、世界が今日、我々の孫たちを愕然とさせることになる何をしているのかを推測、そして、ディープマインドやファーウェイの創業者からのテクノロジー革命に関するアイデアを掲載している。他の記事ではゲスト寄稿者が、アフリカからベネズエラ、アメリカンドリームに至るまで、あらゆるものの将来について、新たな考えのきっかけを提供する。

2020年について一つ確かに言えるのは、この年刊誌は新たな編集者を迎えるということだ。17年の時を経て、水晶玉を次に回すときが来た。トレンドを見分け、それらに脈略を持たせることの達人であるTom Standage氏の下で、未来は素晴らしいものとなろう。

The World in 2020より @2019 Economist Newspaper Limited, London  無断複写・転載を禁じます