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M&A見通し

2019年の世界におけるM&Aは、リフィニティブによると3.9兆ドル (-3%)と過去4番目に大きい金額となりました。このうちプライベートエクイティ・ファンドが関与するバイアウトが13%を占め世界金融危機以前からの最高水準となりました。

2019年の日本関連M&Aは、レコフによると19.8兆円(-37%)と過去2番目に大きい金額となりました。日本のM&A件数では、4,854件 (+3.7%)となり過去最高を記録しました。日本に関するデータは、2018年最大のグローバルM&Aとなった武田薬品工業によるシャイアー買収によって歪みが出ています。

日本のM&Aにおける注目点には興味深い変化がありました。この10年間、日本企業が新たな市場、テクノロジー、生産拠点を意欲的に探す中、アウトバウンドM&Aは増加の傾向にありました。ところが、2019年には大型の国内案件が多く、国内M&Aは過去10年において最高水準となりました。

コングロマリットのビジネスモデルは、ますます見直されるようになっています。企業がこれほど多くの異なる事業を育成し続け、国際的な競争力を維持することはできません。コングロマリットが中核事業に重点的に注力しようとするプロセスは、20年程前のドイツにおいて急速に進み、共通する幾つかの経済的特徴を有する日本において類似した傾向が現在見られます。20年前のドイツ株価指数は、専門化したり、消滅したり、あるいは2019年のティッセンクルップのように構成銘柄から除外された産業コングロマリットが20%を占めていました。

つい最近まで、一般的に日本の大手企業が売却を行うのは、事業が悪化した場合に限られていました。半導体企業は合併が必要となり、財政危機に陥った東芝は優良資産を売却し、日産はかつてルノーからの出資を模索しました。今になって変化したのは、企業が中核事業へのフォーカスという積極的な戦略の一つとして、優良ビジネスの売却に目を向けているということです。それゆえ日立は2019年に日立化成を昭和電工に売却しました(9764億円-この年の日本関連M&Aにおいて3番目の規模)。こうした傾向の中で素早く動いたのは、KKRに医療事業を売却したパナソニックでした。

M&Aに関する考え方の文化的変化は、経済的要因とまったく同様に重要なものです。今後18か月で現れてくる新たな姿勢を反映した傾向を以下にまとめました。

再生のためのM&A日本M&Aセンターは、2019年に日本のM&A 908件でアドバイザーを務め、件数において首位となっています(但しレコフのデータには含まれていません。弊社のこちらの記事をご覧ください)。同社は、後継者不在の企業や継続と成長のための支援を必要とする日本の地方をサポートしています。

コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC) AI、バッテリー、自動運転車、ロボット工学などの分野における新たなテクノロジーを獲得する方法として、今や日本の多くの企業がコーポレート・ベンチャー・キャピタルに期待しています。イスラエルは、シリコンバレーのような狩猟場となっています(弊社のこちらの記事をご覧ください)。

インバウンド。クロスボーダーM&Aはずっと一方通行でした。外資による所有に対する姿勢がより開かれる一方、他方でアジアでのプレゼンスに関する戦略の中核として日本がより魅力的になるにつれ更に多くのインバウンドが期待できます。

サプライチェーン。福島の原発事故やブレグジットなど、あらゆる著しい重大局面によってサプライチェーンの変化は促進されます。コロナウイルスは、企業が生産を多様化する理由となる可能性が高く、これはM&Aの強力な根拠となり得ます。

新たな波。海外でのM&Aを成功させてきた日本の企業は、後に続く案件を行うでしょう。アサヒグループホールディングスはその最たる例であり、一連のM&Aに引き続きオーストラリアにおいて1兆2144億円の買収を行い、これは実に2019年最大規模の日本関連M&Aとなりました。

 

 

日本関連のM&A件数

出所: Recof / Gideon Franklin

 

日本関連のM&A金額

出所: Recof / Gideon Franklin