テクノロジー・フォーカス: AI
人工知能 (AI)は、我々の生活のいたるところにあります。家、会社、車、そしてポケットの中にさえあります。ですが、AIといわれるものは具体的に何なのでしょうか? 弊社のテクノロジー・セクター・アドバイザーでありAI企業SparkCognitionのインターナショナル・ビジネス・ディベロップメント・ディレクターであるアンナ・ディングリーに詳しく聞きました。
AIとは一体何であり、それはどのようにユニークなのでしょうか? それは単にテクノロジーの新しい単語なのでしょうか?
「テクノロジー」と同じく、「人工知能」には非常に幅広い意味があり、例えば5人の人に尋ねれば、おそらく5人それぞれが考える5つの異なった答えと見方が返ってくるでしょう。
AI は、マシーン(コンピューター)に人間の様に考えさせること全てを意味します。言い換えれば、我々が計画したり、推察したり、学習したり、言語の通訳さえする人間の自然なネットワークを複製することです。 AIの最も興味深くそして刺激的なセブセグメントの一つは、機械学習です。それは、コンピューターが特定のタスクをするようプログラムする必要がない、つまり十分なインプットデータがあればコンピューターは独自に学習するというものです。コンピューターは、過去とリアルタイムのデータに基づいて、精度を向上させながら一定の将来における結果や可能性について予測を開始します。マシーンは、人間の脳がもつ能力より、はるかに大量のデータを、はるかに迅速かつ正確に処理することができます。
我々の周りで蓄積された膨大なデータがあれば、AIはそのデータを保存、記憶そして利用することができ、多くの分野においてこれまで以上に現実問題を対処できるようになっています。AIはセクターにかかわらず膨大な効率性とメリットを実現することから、誰もがAIを話題にし自分たちにとっての妥当性を探っています。
AIは生活に浸透しています。唯一の疑問は、それがどのくらい深く、そしてどれくらいの速さでセクターに浸透するかということです。 銀行、金融、そして小売りの分野はかなり先行しており、ヘルスケアと製造は急速に追いついてきています。
「十分に発達した科学技術は魔法と区別がつかない」というアーサー・C.クラークの言葉の引用に慰めを見出すものがいるかもしれません。
AI は第四次産業革命であると考えて良いでしょうか?
大多数の人の生活と労働慣習に影響を与えるという点では、AIは次の産業革命であると考えてよいでしょう。
それは確かに革命といえます。最初の産業革命において、マシーンがそれまでの力作業をスケールアップしたのと同じく、今回の革命は 我々の認識能力を別のレベルに変えています。人々はマシーンが自分たちの仕事を奪ってしまうことや働き方を変えてしまうことを恐れていました。結局、革命によって人々は完全に開放され、より一層の変化がもたらされて生活をもっと楽しむようになりました。AIには、我々の働き方や遊び方を変えるような同様のインパクトがあります。
ギディオン・フランクリン社の顧客はAIについて何を知っていなければなりませんか?またAIは物事を実際どのように変えているのでしょうか?
ギディオン・フランクリン社の顧客がAIについて知っておくべき多くの重要なポイントがあります。チャンスとなるのは、AIによって彼らの未来は既に変化しているということです。
AIの進化は非常に速く、多くの企業が自社の製品やサービスを説明するのに全く同じ言葉を使う場合、それらを差別化することが難しいことから、購入する際はAIに関する知識があることが課題となります。AIシステムを採用することは象を食べることに少し似ているかもしれません。それは圧倒的に大きく、一夜にして起こることではありませんが、最初は小さな一口から始めなければなりません。
顧客が知るべきなのは、データが全てであるということです。高度なAIアルゴリズムを買っても、入力する質の高いデータがなければ殆ど意味がありません。データが全ての始まりであり、データが多ければ多いほど良いといえます。多くの企業がAI導入について向上心をもってトップダウンの目標を掲げるようですが、データの取得が後回しとなっています。 SparkCognitionの Darwinという製品は、自動的にデータのクリーンアップを行いAIモデルを作動するために必要な 機能を見つけることができます。しかし、それもデータが全くない状態では不可能です。
AIの価値は、故障や障害があった場合のコストが高い複雑なプロセスやシステムにおいて、問題が起こった場所と時間を予測するのに役立つ局面において、最も顕著となると考えられます。
AIの世界はスピーディーに変化しており、日々新しいアプリケーションが登場しています。テクノロジーの急速な変化に遅れをとらない方法として、AI企業に投資するベンチャーを始める大企業もあります。しかし実際には、私はこうした部門は未だ日々のオペレーションから非常に隔離されているように感じるので、現実的なプロジェクトも試すことをご提案します。例えば、もし故障したり動作しなくなった場合のコストが非常に高いマシーンまたは部門(データの出所となる)を選びます。AIは、コストが上がっていく前に改善策がとれるよう潜在的な問題を事前に警告するだけでなく、故障の原因について理解を深めることにも役立ちます。
顧客は、AI企業とのパートナーシップを検討する際、それらAI企業によるカスタマーへのAIシステム導入の過去の成功事例(たとえセクターが違っても)について尋ねるべきです。また、AIソリューションのプロバイダーには、そのシステムとアプローチについて透明性を求めるべきです。たとえ最も複雑なAIアルゴリズムであってもある程度説明可能なものでなければなりません。
つまり、質問に対する答えはイエスです、AIは産業を変化させています。そして、その変化のペースはかつてより速いものです。
AI にマイナスの側面はありますか、もしあるなら、どうやって克服すべきでしょうか? プラスの面はマイナスの面に勝るものでしょうか?
私は楽観主義者なので、AIのメリットは当然デメリットに勝っていると考えます。AIによって人々と産業はさらに効率的となり、多くの無駄とフラストレーションを排除することが可能です。いつの時代でも、テクノロジーの影響はそれを使う人々の意思に常に依存しています。 SparkCognitionのCEOである Amir Husainは、先日の米国 National Academies of Sciencesのイベントで、「実際には存在しないマシーンのモチベーションと目に見えない人間の悪意について、どちらを心配するかと聞かれたら、私は後者の方が心配だと答える。」とコメントしています。
もちろんAIの誤使用についての懸念はあります。しかし、私はマシーンが世界を支配することを心配するのは時期尚早であると考えます。いかなる新しいテクノロジーも否定論者の関心を引くことはありません。否定的であることは簡単ですが、批判に対して記念碑を立てるものはいません。先駆者が肯定の模範となり自分たちの意見を聞いてもらわなければならないのです。
AI が最も影響を与えるセクターは何であると考えますか?
AI は、あらゆるセクターに関係しており、それは農業・食品から製造・機械、ヘルスケアからフィットネス、金融・政府関連から小売・消費財、また産業プロセスにかかわる全てです。インターネットが殆ど、あるいは全てのセクターに影響を与えたように、私はAIの場合もそうなると考えます。金融は、多くの場合と同じく動きは早いですが、その背景には 利用者の手元に既にデータがあるからでもあります。SparkCognitionと三菱日立パワーシステムズ株式会社との協業について、そして、そこでのデジタル・パワープラント向けソリューションの運用上メリット強化のためのAI利用については こちら をご覧ください。
…他に何か我々に言いたいこと、またはフォーカスすべきことはありますか?
AIを勝ち取るためには、いわば「虎穴に入らずんば虎子を得ず」です。サイドラインに立っているだけでは、AIについて何も学べません!
アンナ、ありがとうございました!
アンナ・ディングリーは日本において20年以上の経験を有す。最近は、JPMorganにおいてIR責任者、ロンドン証券取引所と東京証券取引所が共同で設立したTokyo AIM (Alternative Investment Market) 取引所においてビジネス・デベロップメント・ディレクターを務めた。他にBloomberg、NTT ドコモ、愛知万博 (英国パビリオン・マネジャー)、英国貿易産業省、および人材紹介会社Robert Waltersなどで勤務。
現在は、米国テキサス州オースティンに本社を置くAI企業の先駆けSparkCognitionのインターナショナル・ビジネス・デベロップメント・ディレクターを務める。
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ロンドンで開催されたGoldman Sachs Disruptive Technology Symposium 2018に参加するアンナ・ディングリー