2018世界はこうなる
2018年に向けての予測は…
エコノミスト誌の 『 The World in 2018(邦題:2018世界はこうなる)』 は、弊社が共催した駐日英国大使館でのセミナー・レセプションにおいて、その著書『Megatech:2050年の技術』を紹介したダニエル・フランクリン氏の編集による予測誌です。ここに新年の2018年において注目すべきいくつかの主要テーマについてまとめました。
リーダーシップの変化 – 欧州、日本、南北アメリカ
新年の欧州では、英国のEU離脱とそれがもたらす経済への影響以外にも大きな出来事が起こるだろう。仏マクロン大統領が 野心的かつ進歩的なリーダーとして登場し、新たな種類の社会契約を推進する点において彼をセオドア・ルーズベルトになぞらえる向きもある。マクロン大統領は、労働者を守る一方で競争と起業家精神を高めることを目指し、2018年には自身の計画の具体化に向けて動くつもりだ。イタリアで予定されている総選挙は、変革と更なるポピュリズム台頭にとってのチャンスとなる。南北アメリカにおいても、注目すべき大きな選挙が控えている。11月の米国中間選挙は、トランプ政権にとって早いタイミングでのリトマス試験となり、民主党にとっては下院において過半数を回復できる可能性を秘めている。ブラジルとメキシコでは、12年ぶりに両国同時に大統領選挙が実施され、コロンビアとベネズエラでも選挙が予定されている。 中南米で最も著しい政権交代がフィデル・カストロによる革命の勝利後カストロ一族が60年近く政権を握っているキューバで進んでおり、誰もが次の展開を注視している。アジアでは、日本の天皇陛下が退位を決め準備を進めており、あるいは世界の他の君主制国家がその考え方を変えるきっかけとなるかもしれない。
世界経済成長および中国に対する疑念
世界経済は過去10年の最速ペースまで加速しながら更なる成長のための環境を整えており、我々は絶え間なく変化する世界経済のバランスとダイナミクスを注意深く見守る必要がある。こうした景気モーメンタムには明らかに先進国と新興国の両方が寄与しており、特にインドが経済大国の中で一番の急成長を遂げる一方、中国が僅差で続いている。しかし、21世紀の振興勢力である中国に対する世界の見方は変化しつつあり、中国の増大する勢力と目論みについて懸念する声もある。この国におけるビジネスは、習近平国家主席による偉大な中国のためのプロジェクトの一環として今後も政府によって大きくコントロールされ続ける。他の国においても、中国の海外活動を抑制するための国家介入が増えていくだろう。オーストラリアから欧州まで海外投資に関するルールは中国による買収阻止を目的として更に厳しくなる。マクロン大統領は欧州の利益を守ることを強く希望しており、アメリカは中国の鋼鉄に対して関税を課し知的財産窃盗に対する制裁措置を講じるつもりだ。つまり、中国を抑制するために世界的に保護主義への移行が進むものと予想される。
世界的な “テックラッシュ(Techlash)”
政治家と “テックラッシュ”ビジネスが受ける影響が大きくなっている。このタイミングにおいて、政治家が罰金、規制および競争法の強化などによって、フェイスブック、グーグル、そしてアマゾンなど巨大テクノロジー企業を攻撃し始めている。一方、企業のリーダーにとっては、こうした変化形成の一角を担い、政府と公衆に対して自分たちは良き地球市民として活動しているとの安心感を与えるために政治舞台に立つチャンスとなる。商業用ドローン、自動運転車、AI(人口知能)、量子コンピューティング、そして医薬品などの急速に進むテクノロジーが我々全てに影響をもたらすだろう。EUは、巨大テクノロジー企業の租税回避や競争の不正隠匿を追及することで“テックラッシュ”のペースを定めようとしている。アメリカもまた、大統領選挙へのロシアの影響力に動揺したために取締りを強化しており、議会はフェイスブックや他の企業に対して誰が政治広告を行ったか開示要求することを検討している。巨大テクノロジー企業は、巨大であるが故に民主主義や国家と市場の均衡に対する影響力を今や有しており、それら企業の分裂にむけての種は今年(2017年)にも蒔かれているのかもしれない。
これらすべてを考えると、2018年は楽観主義の空気を持ちつつも多事多端の一年となることは間違いない。新年の多くの変化が全ての人にとってより平穏で好調な未来をもたらすものとならんことを。